詩
名前のない道に名前をつける喜び 静寂 雨が雪へと変わり スワンは大輪の花となる 蝸牛 蝸牛に呼びかける 蝸牛に呼びかける 数ミリ残る軌跡
あなたは知っていますか 天という字は、 二と人を合わせて天と書くのを
肩を貸す 肩を借りる 間柄
あなたはあなたの物語を語る マッチ箱にマッチ一本を残し
こっそり後をつけてきた女は ピアノバーに消えた 快楽の林檎を齧るために
コウモリがタキシードで 踊ってる 蜘蛛の巣だらけのタキシードで・・・
ワシ鼻の 耳の大きな 絵描き
一輪のバラが 灯となる夜
わたしのコインは表が出ないの そう言ってあなたは笑った
トイプードルを抱く葉巻の男
男は赤い薔薇に囲まれた部屋に入院した
夢の中の君は 黄金の骸骨になって 僕を抱きしめる
虹ひとひら 身にまとい 孤独の青空泳ぐのか
ライターを点けて 淋しさ紛らわす 一葉舟
君は終着駅 それとも始発駅 空と大地がふれあう 唯一無二の駅
冷めた出逢いと 熱いさようなら
ショッキングピンクのきみは ナイアガラの夏の女神
思い出に 妬きもち焼いて 猫を抱く
切れ長の 涼やかなりしそのひとの 椿の柄の扇子ひろげたる様 さながら一幅の美人画の如し
ユーモアを鎖国してしまうとき それはファシズムが始まるとき
人魚の爪はさくら貝 淡き恋のさくら貝
抱きしめたあなたは 冷たい熱帯魚
黒いドレスの女には ジャズがお似合い 女の歌が妖しく燃える
氷雨に濡れる八重桜からこんな声が・・・ 「遅咲きの恋が凍えております」
雑草の中から一本のチューリップ そこに春が生まれてる
齧る 齧る 女は齧る 「ゴリゴリ・ガリガリ・コリコリ」 無心で齧る 齧る齧る氷を齧る 齧る齧る骨を齧る 齧る齧る嘘つき男を齧る 齧る齧る運命を・・・
結ばれぬ よみびとしらずの恋なれば
永遠は 海とお空のさかいめに きらきらひかるおひさま
君がいないと ひと色足りない虹のようだ
濁った浮世の泥の河 君は蛍のともし火で やさしく肩を照らしてくれた