人情の機微


女三人よれば姦しい、と言われる。
女性同士、話に花が咲けば会話も弾むだろう。
ただ、たまにクラブやスナックなどでこれをやられると、
少々気分が滅入ることがある。
特にこの現象が起こるのは、お店が比較的暇な時だ。
ホステスに囲まれるのは、男なら悪い気はしない。
しかし、ホステス同士が、3〜4人で話し始めると事態は変わる。
自分達だけが分かる話題や、男性が興味のない話をはじめる。
つまり、ホステスでなく、たんなる友達同士の会話になる。
始めは黙って聞いている。
そうして、暫く黙っていると、
「飲んでないじゃない。」
と、一応気を使ってくれる。
ただ、面白くないから杯が進まないのを理解してくれない。
「カラオケ歌ったら。」
とまた気は使ってくれる。
今日は、ゆっくりホステスさんと会話を楽しみに来たのに・・・・
と心の声がする。
ただ、私の心の声は届かない。
ますますホステスさん達の、内輪の会話が弾む。
笑い声がする。
私の心の声がする。
「なんかつまらないな・・・・。」
ところが、男は面と向かってつまらないといえない。
なんだか、楽しい会話を邪魔するようで、悪い気がするのだ。
そうこうして、不完全燃焼のまま家路につくことがある。


先日、あるクラブでの出来事。
またまた、ホステス同士の会話に花が咲き始めたとき、
やんわりと、チーママが、
「ホステス同士の話ばかりだと、面白くないわよね。」
と、心配りをしてくれた。
会話の流れも変わり、
なんとなく楽しい気分で過ごすことができた。
人情の機微を、よく知った女性だなと感心した。
私の心の声がした。
「気を使ってくれて、ありがとう。」