晴れやかに


今日は、左手と顔が少々痺れていた。
大事を取って早退。
自宅で、神奈川県立近代文学館で観覧した、
永井荷風展の解説誌を読んでいた。


この雑誌には、様々な永井荷風の写真が掲載されている。
取り分け、浅草のロック座の踊り子達に囲まれ、
背広姿の荷風先生が、まんざらでもない顔で、
三味線を弾いているモノクロ写真が印象的。
この頃、永井荷風は齢(よわい)71歳であった。
何とも粋な文学者の姿ではないか・・・・
私は、踊り子に囲まれ、三味を弾く荷風翁をみながら、
憧憬にも似た心持が沸いてきた。
男盛りを過ぎて尚、若い女性に囲まれ三味を弾く。
江戸の下町の情緒をこよなく愛した、荷風らしい一枚の写真。


荷風は、結構若い頃、放蕩をしたり、
挫折をしたりしている。
海外で銀行の支店長を務めたり、
慶応大学の教授として教壇にも上がっていた。
しかし、何れも長く続かずじまいだった。
そんな荷風先生だけれど、彼の生き様には、何処か飄々とした、
晴れやかなる人生行路の匂いがある。



☆ 永井荷風の風貌は、映画「帝都物語加藤保憲役の嶋田久作
怪奇探偵小説の「ドグラ・マグラ」の作者、夢野久作似。
面長で、糸瓜(へちま)のような輪郭の顔が特徴的。