沈丁花の女


沈丁花の匂う季節となった。
桜は、確かに春を最も感じる花であり、
取り分けその花の色が、春色らしい。


夜雨の中、香る沈丁花もまた、
早春の風情を醸し出す。
桜が、私達の視覚に訴える花だとすれば、
沈丁花は紛れもなく臭覚に訴える早春の花だろう。


沈丁花は情緒的な匂いの花。
それゆえ、石川優子石川さゆりにも、
沈丁花」という題名の歌がある。


そういえば、沈丁花の香り仄かに忍ばせる、着物美人のイメージが、
松本清張原作の「波の塔」のヒロイン頼子にはある。
嘗て、有馬稲子佐久間良子麻生祐未などの女優が、
ヒロイン頼子を演じた。
沈丁花は、どこか異性のために身を持ち崩す、吐息の匂いがする。