そうか、もう君はいないのか


六本木の交差点の本屋で、「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」
を購入したのが、初めての城山三郎の本だった。
ただし、これは彼の著書ではなく翻訳した本だが・・・・・
この本を読んだのは丁度、転職を考えている頃だった。
その後、「男子の本懐」を読んだのだ。
そんなことを、「そうか、もう君はいないのか」を見て思い出した。


湘南の風景が美しい。
太陽に煌く波。
どこまでも広がる青い空。
そして海岸道り。


田村正和扮する城山三郎は、
少々カッコ良すぎるが、
それでも愛妻家の生真面目な小説家を、良く好演している。


若かりし頃の、城山三郎を演じた中村勘太郎と、
容子夫人を演じた長澤まさみも初々しかった。
小説家として生業(なりわい)にしたいという意味で、
「筆一本で生きてゆきたい」
と言う城山の言葉を、
「筆を売る商売」
と勘違いする容子の天然が可愛らしい。



娘役の檀れいも、落ち着いた演技が良かった。
昔なら檀ふみが演じていたのかもしれない・・・・・


「そうか、もう君はいないのか」
守護天使の容子夫人(富司純子)の魂は、
今は亡き、城山三郎氏の心の中で生きていたのだろう。


『見守る』この言葉が身に沁むドラマであった。