シブ〜


修学旅行のバスでのこと。
バスの中でガイドさんが、
「誰か歌を歌ってください」との事になったそうだ。
「なったそうだ」と書いたのは、
私が居眠りをしていて気づかなかったからだ。
手を挙げる者がいなくて困ったガイドさん、
「そこで寝てる人にしましょう」
と、何故か私を指名したそうだ。
隣の友人が肱でトントンと私の肩を押して、
「おい、起きろよ」
と呼びかけた。
起きたけれどまだ夢心地の私。
「さあ、歌ってください」
とガイドさん。
「おまえに歌の指名が来たんだよ」
と友人。
ようやく状況を理解した私。


ぼんやりした頭に浮かんだのは、
渡哲也の「くちなしの花」だった。
「くちなしの花を歌います」
と私が言うと、
リーゼントの同級生が、
「シブ〜」
と唸った。
この「シブ〜」
という言葉が耳に残った。


当時彼は、かなりツッパッテいた。
私が「くちなしの花」を歌い終わると、
妙に彼のウケが良かったのを覚えている。
もしかしたら彼は「西部警察」を見ていて、
渡哲也のファンだったのかもしれない・・・・・