思考のインポテンツ・・・


長恨歌」(ちょうこんか)の感想文を高校時代書いて、
当時の古文の先生に驚かれた。
「僕は思考のインポテンツに陥った」
そんなことを書いて、
「君は凄いね」
と言われたのだ。


長恨歌は白居昜(はっきょい)作の恋愛叙事詩
玄宗皇帝(げんそう)と絶世の美女楊貴妃(ようきひ)の恋愛物語。
そして為政者が恋狂いすると、
国が滅びる元だと、警鐘を鳴らす。


「比翼の鳥」「連理の枝」と、
皇帝と楊貴妃は、最後に永遠の愛を誓い合い、
この恋愛物語は終わるかに思われた。
ところが作者白居昜は、


       天長地久有時盡
       此恨綿無盡期


と、愛の裏にある「恨み」が連綿と続くことを説く。
ハッピーエンドで終わるだろうと思われた物語の転調・・・・
何故、作者白居昜は、永遠の愛に水を差すような一文を添えたのか?
そこにきて、当時の18歳の私は「思考のインポテンツに陥った」
のだった。


「インポテンツ」などと少々過激な表現を使ったけれど、
古文の先生は、
「そういう読み方もあるね」
と微笑されていた。
その年の夏休みの自由課題で、
僕は原稿用紙100枚の小説を書いて先生に提出した。