情熱の枯山水


京都大学の中国文学者、吉川幸次郎先生の講義を楽しみにしていた。
それはNHK教育テレビ「杜甫詩杪」だった。
当時私は高校生で、正直あまり漢文は得意でなかったし、
現代国語のほうが好きだった。
大江健三郎安部公房などを読んでいた。


ある日、何気なくテレビで見た、
吉川幸次郎先生の「杜甫詩妙」に魅かれた。
淡々とした語り口もさることながら、
先生の風貌というか、画面から漂うお人柄に、
碩学の長老には僭越ではあるが、親しみを感じた。
確か講義は、お弟子さんとの対話形式ではなかったか・・・
一方的に講師が語るのではなく、
お弟子さんとの対話形式と言うこともあり、
解り易い講義になっていたように思う。


当時先生の著書では、
岩波新書の「新唐詩選」三好達治と共著などを読んだ記憶がある。


漢文に興味を若干でも覚えたのは、
吉川先生のテレビの講義を見たからだ。


先生は枯山水に佇む仙人のようだったけど、
情熱、気迫、洒脱、
そんな言葉も先生の講義から伝わってきたように記憶している。
吉川先生の「新唐詩選」を再読したくなった。