「青」の魔力


六本木の国立新美術館の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー」
を鑑賞した。
印象派・ポスト印象派奇跡のコレクション」
フレデリック・バジールの「エドモン・メートル」
の葉巻を見つめる髭の紳士。
どこかボードレールの詩集「悪の華」の匂いがある。
クロード・モネの「日傘の女性、モネ夫人と息子」
に夫人の姿と雲に空気の動きを感じた。
そして絶妙な光と影。
同じくクロード・モネの「ヴィトゥイユの画家の庭」
などが印象深かった。


ポール・シニャックの「ブイ」の点描法の色彩は美しい。
「ブイ」の点描画はコンピュータグラフィックスのようだ。
そして何故か私は、
先日戴いた枇杷の実の瑞々しい色彩を思い出していた。
ロートレックの「カルメン・ゴーダン」
のロマのような女性。
貴婦人からは遠い存在だが、
きりりとした口元と赤銅色のショートヘアが魅力的。


それにしてもブルーが網膜に刻みつけられる作品が印象派には多い。
特にゴッホの自画像の「ブルー」のオーラに、
病に侵された彼の心象を見る思いがした。
無表情な彼を、
情熱の芸術家ゴッホが冷静に描いている。
自分自身を描きながらゴッホその人は、
荒ぶるマグマの横溢(おういつ)をキャンバスに入魂した。
黄色の肌にやや緑がかった痩せこけた顔。
橙の髪と髭。
彼が亡くなる一年前の作品「自画像」の静謐な世界に、
現世と来世を結ぶ青の魔力を見る思いがした。
まさに「青」の魔力に魅せられていた・・・・