アフリカの血脈


埼玉県立近代美術館の『彫刻家 エル・アナツイのアフリカ』を鑑賞。
エル・アナツイはアフリカのガーナ生まれの彫刻家。


展示会の第一章のテーマは『記憶を彫る』
チェーンソーで切り分け木片を人のかたちに積み重ねた人物像など、
基本的に木を素材にした作品となっている。
チェーンソーによる切断面、
バーナーによる黒い焦げ跡などがある。
切断面や焦げ跡は植民地支配による分断されたアフリカ、
奴隷貿易などの暗黒時代のアフリカを象徴している。
アフリカの記憶を彫った彼の作品を観覧しているうちに、
いつしか「鑑賞」から「体感」に変化していた。


第二章の『歴史を紡ぐ』では、
空き缶のふたを使ったインスタレーションを試み、
同時にビールやリカーのふたなど巧みに使った、
金属の織物(メタル・タベストリー)を制作している。
彼の織物は布地とは異なる光沢と独特の量感があった。


私は彼の金属の織物を鑑賞しながら、
古代エジプトクレオパトラツタンカーメンの装飾を髣髴していた。
古代エジプトの装飾とエル・アナツイの作品に、
どこか同じ血脈を見る思いがしたからだ。
それは金属と言う無機物でありながら、
どこか呪術的なオーラを放っている。


人類の誕生の地はアフリカだと言われる。
母なる大地アフリカ。
エル・アナツイの作品は、
母なるアフリカの歴史の息吹。
連綿としたアフリカの血脈を具現化している。