汗と涙の人情物語ーとんびー


重松清原作・堤真一主演「とんび」を見た。
舞台は広島県備前市
時代は昭和37年から始まる。
この物語は、ほぼ私の生きてきた時代とも重なり、
昭和の風俗が懐かしかった。


運送会社の荷役夫の主人公のヤスは、
妻を事故で亡くした男鰥夫(おとこやもめ)
の「シングルファーザー」
ヤスは熱くて愚かで空回りするが、
憎めない広島の男。
幼少の頃、父親に捨てられた境遇がある。


このドラマを見て、
何度か涙腺が緩んだが、
一人息子(池松壮亮)が東京の大学に進学することになり、
カレーライスを父と息子が黙々と食べるシーンでは、
涙がてんこ盛りになり、堪えきれなくなっていた。
不器用な父親と、
頑固な息子だが、
カレーライスを食べながら男同士心を通わせている。


このドラマの俳優達、
それぞれの持ち味をだして実にいい。
ヤスの堤真一
小料理屋の女将小泉今日子
息子の池松壮亮
二代目の生ぐさ坊主古田新太


ヤスがランニングで汗水流して働く姿が、
ランニング姿で自転車に跨がる、
父のモノクロ写真と重なっていた。
私はこの写真が好きだ。
鉢巻をした笑顔の父は紛れもなく肉体労働者だが、
やや頬のこけた繊細な顔が、
若き日の文学青年の俤が漂っている。


顧みれば私も平成を生きた年月が、
昭和を生きた年数を超えようとしている、
このドラマを見てそんなことをふと思った。