ジュネが似合う町


新宿に住んでいたこともあってか、
よく都会の裏町を散歩していた時期がある。
渋谷の神泉から円山町の道すがらが印象に残っている。
神泉駅は渋谷から井の頭線で一つ目の駅になる。
神泉から円山は昔の花街で、
私がぶらぶらしていた1980年代はラブホテルが立ち並んでいた。
夜は煌びやかなネオンが輝いているのだろうが、
昼間歩いていると、化粧を落とした女優のような、
はっきりしないのっぺりとした感じがあった。
何故かフランスの小説家ジャン・ジュネが似合う、
そんな匂いがある町だった。


泥棒をしながらヨーロッパを流浪したジュネ。
流浪と監獄の生活を繰り返した彼だが、
文学の才能が彼を救った。


当時、フランス文学を濫読していた時期で、
朝吹三吉訳でジャン・ジュネの「泥棒日記」も読んでいたが、
正直、あまりよく理解できなかった。