父の卵割り


亡くなった父の写真を整理していたら若い頃の写真があった。
飲食店をしていた30代の父の写真。
白い調理服を着た父の後ろ姿。
調理場で働く母と祖母も写っている。
大きな業務用の湯沸器もある。
まるで「渡る世間は鬼ばかり」の幸楽のようだ。
東京オリンピックを前にした昭和38年ごろ頃の写真。


そういえば玉子割りの妙技を思い出した。
右手と左手に玉子を持ちながら、
一度にふたつ割っていたのを思い出す。
器用だなと感心していた・・・


また、オート三輪の前で、
父と赤ちゃん(兄)を抱く母と三人で写っている姿も印象的だった。
父はスマートで文学青年の面影も漂わせている。
ロシア文学を読んでいたんだ」
ゴーリキーとか」
そんなことを話していたことがあった。
この写真「三丁目の夕日」のようだ。 


そして半纏姿でタバコをふかしている、
祭りのショットもなかなかいなせでいい男だ。
やんちゃな感じがいいなと思う。
ロシア文学も好きだったのだろうけど、
江戸情緒も好きだったようで、
壮年から晩年は清元を趣味にしていた。


まだまだ父の思い出は尽きないが、
父の背中は大きく温かい、
そんな気持がしている。