お願いにあがる


業界団体の退任された会長に相談役の就任のお願いに会社に伺った。
会長副会長の三役会の総意で前会長の相談役就任が決まり、
わたしが前会長に就任のお願いにあがった。
前会長はオーナー社長で、
社長室には長嶋茂雄名誉監督や鳩山由紀夫御夫妻との写真が飾ってあった。
「長嶋監督とは同い年なんだよ」
「長嶋監督の生まれた1936年のワインを贈ったんだ」
と嬉しそうに話されていた。
そんなよもや話をした後、
「ぜひ相談役にご就任いただきたいのですが」
と頭を下げてお頼みすると、
「相談役の器じゃないよ」
「退任するときに相談役の要請がなかったから、
 もう何もすることはないと思ってたんだよ、
 だからこれでお別れだねって言ったよね」
と話されていた。
話の内容を察するに、
前会長が退任されるとき相談役をお願いしなかったことが、
どうも不満だったらしい。
「考えとくよ」
とのご返事だった。


「まあその話は話として、食事でもどうですか」
とお誘いいただき、
前会長に美味しいしゃぶしゃぶをご馳走していただいた。