友は酒


先日、おじの通夜があった。
おじは母の姉の伴侶。
酒を飲むと陽気になる明るいおじさんだった。
「酒あればこの世は楽しい」
そんなおじだった。
さいころ、3年ほど同じ屋根の下でおじ達の家族と暮らしていた。
「家にはお父さんが二人いて、お母さんが二人いて、おばあさんが二人いて、
子どもが五人います」
幼稚園のとき兄が先生にお話した家族構成だ。
そんな分けで幼い頃の私は、従兄弟達とは兄弟のように育った。


「亡くなる前の日まで飲んでたんだよ」
従兄が通夜ぶるまいの席で話していた。
遺影には日本酒が供えられていた。
おじは酒が好きで、ニッカのキングサイズをよく飲んでいた。
晩年は、焼酎の大五郎を飲んでいたそうだ。


昨年おじは脳溢血になった。
幸いあまり後遺症は残らなかった。
従兄も父親を心配して酒を止めるようにおじを諭したが、
とうとう死ぬまで酒は止めなかった。
「言うこと聞かないなら、よいよいにならずに逝ってくれ」
と従兄は切れてそう言ったそうだ。
おじさんにとって人生の友は酒だった。
臨終の間際「お父さん分かる」との伯母の問いかけに、
少しだけ意識が戻って、片手で拝むようにしていたそうだ。
おじは息子の言うとおり、
迷惑かけることなく旅立った。