届かないメッセージ


それは去年の今頃、
外資系の生命保険の営業マンが会社を訪問した。
「お久しぶりです、」
と人懐っこい笑顔で彼は挨拶した。
彼と四方や話をした後、
「一年に一度ぐらい訪問したいのですが、よろしいですか」
との彼の申し出に、
「どうぞお越しください」
と私は応えた。
彼との出会いは得意先の役員の紹介だった。
ある大学教授の甥っ子とのことで、
その教授から頼まれているとの事だった。
話してみると彼は私と同郷であり、
兄と同じ高校を卒業していたので親しみを感じていた。
ラガーマンらしい爽やかなスポーツマンの印象があった。


もう一年は過ぎたけど、
彼の訪問は未だない。
電話連絡もない。
しかし一抹の不安はあった。
「これから常務の誕生日の日に毎年手紙を送っていいですか」
そんなことを以前も話していたが、
3年間1通も手紙はこなかったからだ。
まあ、私の会社も彼の大勢の顧客の中の一社でしかないことは確かだが・・・


日本の大手生保の中には、対面のアフターフォローによって、
生命保険と言うカタチのない商品を、
顧客に満足してもらえる努力をしている企業もある。



そういえば誕生日と言えば、
ある馴染みのクラブで私の誕生日をママが忘れていて、
「ママ忘れちゃたの」
と言ったら、
チーママに
「大勢お客さんがいるんだから、
 ママだっていちいちお客さんの誕生日お覚えてられないわよ」
と強い口調で言われたことがあった。
「まあ、それもわかるけど、チーママも僕の誕生日忘れてるよな」
と内心思った。
そんなこんなはあったが、
翌年からチーママは誕生日を覚えててくれて、
お祝いをしてくれた。
そんな昔のことを思い出していた。