奥歯に別れを告げて


ひと月前のこと、
物を噛むと右上の奥歯が痛む。
満足に物を噛むのが困難になってきた。
そこで我慢できなくなって歯医者に診てもらうと、
「右上の奥歯にヒビが入ってますね
 う〜ん3箇所ヒビがね、神経も痛んでる」
「ほら、この歯、グラグラしてるでしょう」
「歯ぎしりとかしますか」
「多分ないと思います」
(今年は歯ぎしりしたい出来事もあったけど・・・)
「残念ですがこの歯は抜かないといけませんね」
との診断だった。


まずは麻酔の注射。
ひと刺しはチクッとする。
右側の歯茎、舌、頬が時間が経つと麻酔が効いて感覚がなくなってくる。
いよいよ抜歯。
歯科医が歯を抜こうとするが、
ぐらついてる歯にしては、意外に頑張って抜けない。
「麻酔を増やします」
麻酔を追加して、
ペンチ?のような器具で何度か力を込めると、
「ベリべリ」
と音がして歯が抜けた。


「これが抜けた歯ですよ」
と歯科医。
ガーゼに置かれた血まみれの奥歯があった。
歯根が長い、自分ながら立派な歯だと思った。
そんな奥歯をわたしはヒビが入るほど、酷使してしまったようだ。


血まみれの奥歯に、
「すまなかったね、ご苦労さま」
と心で感謝しお別れを告げた。