看取るということ


私は父を看取ることができなかった。
部屋の中で父が倒れていたが、
苦悶の表情ではなく、眠っているような顔だった。
「親父は自分が死ぬって意識しないで亡くなったんじゃないかな」
兄がそんな言葉をつぶやいた。


医療関係の新規事業あたり生の声を聴くために、
介護士の方に話を伺った。
訪問看護、介護とは、死を看取ることです」
「死を看取る」その言葉に、
私は雷に打たれたような気持になっていた。


会社の新規事業なので利益が出るのか出ないのか、
それはそれで大事なのだけれど、
「何故この事業を行うのか!」
「地域や社会への貢献!」
「死を看取る仕事とは・・・」
様々な思いが何度も何度も頭の中を巡るのだ。
どこか今回の事業の責任者になったことに見えない力を感じている。
父が背中を押してくれているような気がした。