津軽のコンパニオン


先日、ある宴会でのコンパニオンとの会話。
色白の娘で、どこか純朴な感じであった。
何気なく出身を聞いてみると、青森県津軽出身。
東京に上京して五年。
東京での生活は、なんとなく寂しいと話していたので
「県人会には、入っていないの」と、
私が聞くと、彼女は県人会の存在を知らなかった。
「県人会とは、同じ県人出身者が、集うサークル活動のようなものだ」と
コンパニオンに説明すると、彼女の眼が輝いて応えた。
「県人会があれば入りたいな」
井沢八郎のヒット曲「ああ上野駅」は、いまは昔の観もあるけれど、
都会の中で、郷土の香り、同郷のふれあいを求めている
若者も、まだいるのではないかと思えた。
県人会などいまの若者には、古くて魅力のない集まりだと思っていたが、
津軽のコンパニオンに、同郷のふれあいを求める少し孤独な、
若者の姿を見るおもいがした。
そんなことを、つれづれに考えていると、二人の文学者を思い出した。
太宰治石川啄木である。
同郷のふれあいを求めながらも、都会派を目指し、孤独を感じた太宰治
停車場にふるさとのなまりを聞きに行った、啄木の魂の叫び。
望郷の念とは、古くて新しい心情なのかもしれない。


太宰治(だざいおさむ)1909〜48 青森県生まれの作家
東大在学中、左翼運動に参加、戦後デカダン文学
の旗手として「斜陽」「人間失格」などの作品が
ある。「走れメロス」は教科書にも使われ、
なじみが深い。玉川上水で心中した。


石川啄木(いしかわたくぼく)1885〜1912岩手県生まれの歌人
貧窮の中に口語による生活詩をつくる。初め「明星」
に詩を発表、後に社会主義の影響が強くなる。
「一握の砂」「悲しき玩具」など生活苦を歌い上げた
歌集を世に出している。




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