粋なひととき


「朧夜の父の清元艶やかに」


先日、日本橋三越劇場で「日本橋くらま会」の催しを観覧した。
番組は、小唄 夢の柳橋 中州から。 常磐津  お祭り勢獅子。
 長唄 雪月花。 清元 青海波。 清元 お祭り等。
毎年観覧するのを、楽しみにしている。
日本橋くらま会」は、春に日本橋三越劇場で、
夏は浅草のゴロゴロ会館で、それぞれ催している。
日本橋、銀座の老舗の旦那衆が、粋な小唄長唄で喉を鳴らす。
そこは、江戸情緒たぷっりの空間が広がる。
私は、清元の七五調の口上に粋を感じる。
七五調は、俳句、短歌と,日本の伝統文化に脈々と受け継がれてきた、
独特のリズム(調べ)がある。
例えば、清元の「青海波」の冒頭を引用してみる。


    神代より光り輝く日の本や
    千寿満寿の世語りを、

    今に伝えて陸奥の千賀の塩竃煙たつ

    霞に明けし松島の 眺めは尽きぬ春の日の

    汐の干潟をゆく袖に うつす薫りもなつかしき


七五調の小気味良い調べとなっている。
小気味良さが粋となる。
そういえば、観覧に来られたご婦人の中に
凛とした着物姿の方がいた。
松本幸四郎の紀子夫人のように、楚々としていた。
粋にして艶やかな花のようだった。
旦那衆馴染みの、銀座のクラブのママかもしれない。
和の雰囲気を堪能することできた、ひとときであった。


帰りに食した、なだ万の懐石もまた美味だった。



*清元 きよもと

19世紀の初めに始まった、浄瑠璃の一派。
所作事で多く使われる。
初代清元延寿太夫(1777〜1825)が
文化十一年(1814年)に創始したもの。
市村座顔見世にて、出演して清元の名称を興した。


*「青海波」 せいがいは

曲名 初代清元延寿太夫定紋なので、
それに因んで、歌詞を作り曲名とした。
作詞者 永井素岳(そがく)
作曲者 二世清元梅吉
初演 明治三十年六月三十日、
両国中村楼。五代目延寿太夫の襲名披露の席。 
内容 名高い海の名勝を、春夏秋冬の季節の順序、
しかも東から次第に西への順序で綴ったものである。
清元の祝儀曲の代表曲。


ちなみに、私は茶道のお稽古で「青海波」という
相模焼きの、お茶碗をよく使った。


九鬼周造
「いき」の構造 を読むと粋の
哲学的考察ができる。



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