監獄の誕生


学生時代、建築学科の友人が、
卒業制作のことで、相談にきたことがあった。
当時、私は、文学部の学生であり、理工系の建築学科のことは、
門外漢であった。
そんな、建築には、専門外の私への相談は、
「卒業設計に、監獄の設計をしたいと考えている。ついては、監獄について、
参考になる本はないか。また、監獄について色々教えてほしい。」
との話しであった。
私の在学した大学は、文系と理系が同じキャンパスにあり、
よく、それぞれの学問の話ができて、知的刺激があった。
そんな、知的環境もあり、気軽に友人も、相談をしたのかもしれない。
監獄に関する本で、すぐ頭に浮かんだのが、ミッシェル・フーコーであった。
「ミッシェル・フーコーの、監獄の誕生を読んでみたら参考になるよ。」
それが、参考文献に関する、私のアドバイスであった。
しかし、私の、フーコーの知識は豊富とはいえず、
構造主義」の思想家であること、
現代思想」という哲学誌で、吉本隆明との対談を、読んだぐらいであった。
また、「監獄の誕生・監視と処罰」も本屋でぱらぱら捲った程度だった。
それでも、監獄は、何故誕生したのか?
それには、興味深いものがあった。
建築学科の友人は、けして安くないその本を、購入して読んだ。
彼の感想は、取りあえず参考になったとのことだった。
ゼミの教授からは、コンセプト、デザインは独創性があるが、
構造力学的に不可能な建築物を、建てないように、注意されたということだった。
友人の卒業制作は、一定の評価を得たと聞いて、
少しばかり私も安心した。
ただし、自分の卒論が、全然進んでいなかったことに、気がついて、
慌てたのを覚えている。


*ミッシェル・フーコー(micel foucault)(1926〜1984)
戦後フランスを代表する哲学者、歴史家。
「知の考古学」
「言葉と物」
「狂気の歴史、古典主義時代における」などの著作がある。


*それにしても、フーコーが論究した、監獄あるいは監視の、
社会システムがじわじわ広がりつつある。
治安の悪化による、監視カメラ社会など。