梶芽衣子、白無垢の心


燻し銀の演技とは、どちらかといえば、男優にたいする、
褒め言葉かもしれない。
ただし、鬼平犯科帳のおまさを演じる梶芽衣子は、
まさに燻し銀の女優である。
梶芽衣子は、本名が雅子であるが、
「おまさ」はどこか彼女の、分身のようだ。
平蔵(中村吉右衛門)の渋い声で、
「おまさ」と呼ばれるのは、役の上とはいえ
悪い気はしないだろう。
梶芽衣子は、「野良猫ロック」シリーズでクールな女を、
好演している。
まさに、都会の野良猫だ。
女囚さそりでは、刺すような視線で、怨みを燃やす女を、
演じている。
「切られる覚悟で、あたしに惚れな」
そんなカミソリのような女だ。
彼女の歌う、有名な「怨み節」も独特の低音の歌唱が、
詞と曲にマッチしている。
密偵おまさの過去と、女囚さそりの梶芽衣子が、
二重写しになる。
鬼平犯科帳の「昔の男」で、昔の男への情とみれんに、
揺れ動くおまさは、女の業をもてあます。
河明かりのように、過去の想いが浮かんでは消える。
過去に激しい恋と、はすっぱな人生を経験したからこそ、
おまさの心の陰影は、悲しい。
私は、そんなおまさが好きだ。
辛酸を舐めたからこそ、人に優しくなれる。
鬼平長谷川平蔵もそんなおまさに、
惻隠の情をかける。
梶芽衣子は「寺内貫太郎一家」でも、足の不自由な娘を
演じていた。
私が、特に印象に残っているシーンは、梶芽衣子扮する静枝の
嫁入り衣裳だった。


花嫁衣装は白無垢。


梶芽衣子の役柄は、汚れ役が多かったが、心は白無垢の女性だったと思う。



人気blogランキングへ