年上の女性(ひと)


私が20代の頃、或る俳句の結社に所属していた時の思い出だ。
その女性は、30代半ばの烏丸せつこ似の小奇麗な方だった。
新橋で小料理屋を開いていた。
その方は、どちらかといえば小柄で、
句会には、いつも品のある色合いの、着物を粋に着こなしていた。
ただ、俳句の主宰が女性であったので、
どことなく先生のお召し物に配慮されていたように思う。
物腰は柔らかだったが、凛とした雰囲気のある女性だった。
その俳句結社の新人賞を、その女性は受賞された。
会場は、日本橋の公民館だったと思う。
丁度、私と彼女は、席が隣り合わせであった。
主宰より表彰状をいただき、
席にもどると、彼女から私に声をかけてくれた。


「あなたが、本来受賞される賞ですよ。」


陽だまりのように微笑んで、
さらりと言われたその言葉が、心に沁みた。
年上の女性から励まされたことで、
少しうきうきしたことを覚えている。
上手に人を褒めることのできる方だなと思った。
俳句結社のおじ様たちの、マドンナ的存在だった。
当時の若い私が、話しかける余地などなかった。
江戸小紋のお姿が、印象に残る方だった。
ただ、その方は、それから数年の後、
白血病で帰らぬ人となってしまった。
陽炎のような女性だった。


「陽炎のうしろすがたの江戸小紋


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