二人だけの送別会


20代の後半、私は転職をした。
ある新聞社の印刷会社に勤めていたが、海外の仕事をしたく、
東南アジアの某国の現地法人会社に就職した。
転職することを、社長に報告すると、
「君と二人で、送別会をしたい。
 ついては、君の行きつけの店で飲もう。」
とお誘いをいただいた。
会社に5年程しか勤めていない私に、社長から二人だけの送別会を、
開いていただけると言われたとき、心から嬉しく感じた。
社長は、大手新聞社の政治部長を経験されて、
その子会社の社長に就任された方だった。
読売新聞の渡邉恒雄氏などとも、
渡辺社長が番記者時代面識があったということだ。
たまに、政治の裏話や、吉田茂大野伴睦三木武吉など、
昔の政治家の興味深い話をしていただいた。
私も、戸川猪佐武小説吉田学校」を全巻読み、勉強して、
話の内容を、理解しようと努めた。
私が、俳句をしていたので、よく個人的に社長室に呼ばれ俳句の話などもした。
担当課長に、
「君と社長秘書しか、自由に社長室には入れないよ。」
と言われたことがあった。
社長と私の、二人だけの送別会は、居酒屋で飲むこととなった。
今後の私の身の振り方など聞かれ、海外での仕事をすることなどを報告すると、
社長から、頑張るようにと、激励していただいた。
社長はもう、90歳ぐらいになられているだろう。
もし、何かの機会で、お会いできたら、
また、お酒のお誘いをしていただけるだろうか。
今なら、もう少し私も、大人の会話ができるかもしれない。

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