ヘレン・ケラーとサリバン先生


通勤電車の中、若い二人女性が一生懸命手話をしている。
体をお互い向き合い、目と目を見つめ合いながら、
お互いの気持ちを伝えようとしている。
私の前に座られている聾唖者の二人の女性に、
私は、感動していた。
お互いに、自分の気持ちを相手に伝え、相手の気持ちを
誠実に理解しようとする、本来のコミニュケーションの
姿を見る思いがしたからだ。
お二人の女性の熱意ある姿を見たとき、
子供のころ観た映画「奇跡の人」を思い出した。
ヘレンは、盲、聾、唖の三重の障害に見舞われたが、
サリバン先生との出会いで、言葉を覚え、
生きる喜びに目覚めた女性だ。
後年、大学を卒業し、福祉活動に献身した。
日本にも数度訪れている。


『冷たい水が私の片手を勢いよく流れている間に、
別の手に初めはゆっくりと、次には迅速に「水(ウォーター)」
いう語をつづられました。私は身動きもせず立ったままで、
全身の注意を先生の指の運動にそそいでいました。
ー中略ーこの時初めて私はw−a−t−e−rはいま自分の
片手の上を流れているふしぎな冷たい者の名であることを知りました。』


「わたしの生涯」サリバン先生 ヘレン・ケラー 岩橋武夫訳


ヘレンが初めて文字を覚えた、感動の場面である。
冷たい水の体感が、文字を実感として理解するきっかけとなる。
勿論、この奇跡の誕生には、ヘレンとサリバン先生との格闘と信頼関係がある。
映画では、ヘレンが「w−a−t−e−r」
という言葉を覚え、喜びに満ち、色々な物に触れながら、
次々にサリバン先生に聞くシーンを、今でも私は鮮明に覚えている。
さらに、言葉を覚えたヘレンは、神の光に導かれるがごとく、
読書をすることで、自らの世界を広げていく。
最後に、そんなヘレンの心情を綴った文章を「わたしの生涯」より
引用してみる。


『この生きた一言が、私の魂をめざまし、
それに光と希望と喜びとを与え、私の魂を解放することになったのです。』


*2006年10月には、ヘレン・ケラー石原さとみ
 サリバン先生を田畑智子で舞台化をする。
 石原さとみは、初めての舞台となる。
 かつて、鈴木杏大竹しのぶで舞台化している。
 ヘレン役は、若手演技派女優の登竜門でもあり、
 荻野目慶子、中島朋子、菅野美穂なども演じている。

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