絢香、三日月の願い


昨日は、月が皓々(こうこう)と照り、少し幻想的な夜だった。
強風で、色々な塵や埃が飛ばされ、空気が浄化されたのだろう。
古の文人紫式部西行も、月を愛でたに違いない。
西洋では、狼男をはじめ、月は不吉な印象があるが、
日本では、むしろ美しい景物として人々に親しまれている。
狸囃子も、満月に誘われてポンポコポンと、
狸がお腹を叩く、コミカルな印象がある。


先日、絢香(あやか)の「三日月」を切々と歌う女性を拝見した。
なにか、誰かに訴えかけているような、
恋する男性を、回想しているような情感たっぷりな歌唱だった。
「三日月」に重ねて、自らの願いを歌い上げているようだった。


  がんばっているからねって
  強くなるからねって


このフレーズは、恋する人へのメッセージなのだろうが、
どこか自分自信を元気ずけるような印象がある。 


  つながっているからねって
  愛してるからねって


三日月のような、儚い関係でも、
絆を信じている愛しい人への思い。
愛しい人へのメッセージであると共に、
そうした気持ちを、自ら実感として確認する言葉。
それが、語尾の『ねって』に言い表されているよな気がする。


絢香のメッセージは、歌を、
「人の心に伝え届けること」
彼女は、キャロル・キングなど70年代の女性シンガーソングライター
の影響を受けている、アダルトな音楽嗜好だ。
何よりも、「人の心に伝え届けること」のメッセージからも、
音楽にたいして真摯な印象がある。
19歳の若さと、少し大人びた歌唱力。
そして、詞とメロディーは、
同世代だけでなく、広く女性の共感を呼んでいる。
そうした、裾野の広いファンに支えられて、
絢香の「三日月」は、オリコンチャート1位に輝いた。


月の歌姫として、柴田淳がいる。
柴田淳は「紅蓮の月」を歌っている。
彼女の月は、満月の赤い月。
柴田淳の「紅蓮の月」を聴いていると、
仮面に隠された、秘めやかな紅蓮の月が浮かぶ。
絢香の三日月は、煌々とした月のイメージがある。
そして何よりも「願い」を感じる。