情報のラマダンⅡ


「解釈を拒絶して動じないもだけが美しい、
これが宣長の抱いた一番強い思想だ。
解釈だらけの現代には一番秘められた思想だ。」


「無常といふ事」 小林秀雄


読書は、同じ本を読んでも、自分自身の状況で随分と、
読後の感想が変わるものだ。
社会人になって、様々な経験を重ねると、感じ方も違ってくる。
私は、この小林秀雄の「解釈だらけの現代」という言葉に、
共感する。
社会人になり海外駐在員として仕事をしていたとき、
日本の情報は少なくなったが、意外と澄んだ気持ちで、
母国である日本を考えることができた。
情報のラマダン(断食月)ができたからかもしれない。


マスコミによって流される、膨大な情報を私たちは、
謂わば無意識に、半強制的に食べさせられている。
お腹一杯状態のなかで、よく消化されることなく情報が溜まっている。
栄養になるのではなく、満腹感に安心している。
そして、いつも満腹でないといられない状態に、
なることさえある。
自分自身で考えることなく、情報に右往左往してしまう。
情報のラマダン(断食)をすることで、「解釈だらけの現代」を、
自らの、手持ちの情報で熟考し、思考の地平を切り開けたらと思う。