波の塔


松本清張ドラマスペシャル、「波の塔」を視る。
このドラマは、以前テレビで視たことがある。
NHKで放映され、佐久間良子が主演していた。
今回は、美しい人妻頼子役に麻生祐未
若き検事小野木役を小泉孝太郎が演じている。
頼子の夫で、政治ブローカーの朝倉役に、津川雅彦
津川は、さすがに貫禄がある。
特捜部主任検事の柳葉敏郎も正義感があり、適役だ。
有名なキスシーンもなかなかだった。
キスの後、さっと口紅を拭いてあげる着物姿の頼子に、
大人の女性を感じる。台風の夜、必死で帰宅しようとする、
小野木と頼子。
「頼子だけがいると思っていてください。」
焚き火の炎の中、
頼子の女の情念も燃える。
激しく抱きあう、小野木と頼子。
真っ赤な薔薇と猫と暮らす頼子。
朝倉も頼子もぎりぎりの人生の綱渡りをしている。
ふたりのせめぎ合いも迫力がある。
頼子は愛する男、小野木を守り、
朝倉は、政治ブローカーとして闇の仕事をしている。
愛と金。
それぞれが、人間臭く生きている。
頼子は、解放されたい。
朝倉から、過去の自分から、
硬い殻を破るべく、朝倉と離婚しようとする。
朝倉は、頼子を愛している。
純粋にして屈折した愛情表現。
私には、むしろ夫の朝倉より頼子のほうが、
エキセントリックに思える場面がある。
頼子のちょっとした表情。
小野木が、ガサ入れに来たときの、
小野木を見つめる頼子の恍惚とした表情。
松本清張は、様々な事件を通して、
人間の心の闇を白日に晒す。
青木ヶ原の樹海は、心の迷宮。
一度踏み入れたら戻れない。
松本清張は、人間模様の曼荼羅を見事に描いている。