明智光秀


明智光秀〜神に愛されなかった男を視た。
明智光秀石田三成、いずれも敗北の武将として有名だ。
明智光秀は特に主君を裏切った角として、評判芳しからざる武将だ。
秀吉に討たれ、三日天下などど揶揄されている。
しかし、明智光秀なくば、将軍足利義昭織田信長の出会いはなかった。
歴史は動かなかったかもしれない。


このドラマの光秀(唐沢寿明)は生真面目にして優秀な武将だ。
対照的なのは、木下藤吉郎柳葉敏郎)だ。
ひょうきんにして、性根明るく、智謀湧くが如し。
上川隆也が、エキセントリックな織田信長を演じている。
功名が辻」の実直な山内一豊と信長では、性格が一変している。
全ての既成の秩序を打ち壊す信長。
それは、信仰の総本山叡山に対しても、例外ではなかった。
まさに、聖域なき破壊だ。


光秀の妻、ひろ子役の長澤まさみが、ナレーションも務めている。
また、母親役も演じている。
光秀は藤吉郎の窮地を助ける。
武具を脱ぎ捨て、逃げ切る。
光秀の究極の願いは、「戦の無い世の中」だ。
いつも眉間に皺を寄せている光秀に、
妻ひろ子は仏の優しさを感じる。
叡山を焼き討ちにしたことを、ひろ子は責める。
苦悩する光秀。
「わしは鬼じゃ」と土下座する光秀。
「すまなかった」と近江の領民に謝る光秀。
光秀の人柄に、次第に領民の心も打ち解ける。
領民に慕われた戦国大名としては、石田三成も同じだ。


能楽の席で信長に満座で折檻され、屈辱を受ける光秀。
織田家の行く末を案じる光秀。
光秀と秀吉の会話。
民を大切にする光秀。
どこまでも、理路整然としている。
光秀は、信長でなく秀吉に為政者の資質を感じる。
光秀は、天下の捨石とならんとする。
敢えて逆臣となり、汚名を受けるを覚悟する光秀。
秀吉に天下を取らすために・・・・
天下安寧のために。


本能寺の変へと歴史の舞台は移り、
大きく時代は動く。
「命の危機とあらば、直ち逃げよ。」
「敵は西にあらず、敵は本能寺にあり。」
「逃げよ」とは、殺生を好まない光秀らしい言葉だ。


「このような日が来ると思うたことがある。」
と信長。
「光秀、長いことよう使えてくれた、大儀。」
そう言い残し、
炎のなか、切腹し果てる織田信長


光秀謀反の報を聴いた秀吉。
明智殿は天下を取るために謀反をしたのではないわ。」
秀吉は、明智光秀の真意を汲み取り、
光秀を討ちに大返しする。


史実とは違うが、最後は秀吉と光秀の鉄砲の決闘となる。
わざと、光秀は秀吉に撃たれる。
木彫りの仏を光秀の分身のごとく握り締めるひろ子。


最後の、長澤まさみ演じる明智ひろ子の言葉が印象的だ。
「光秀さま綺麗な海が見えまする。あれが瑠璃色というのでしょうか。」