夜間飛行


たまたま飛行機で窓側の席に座ることができた。
香港を飛び立ったのは、香港時間で午後3時過ぎだった。
窓の外に雲海が広がる。
流氷のようにも、シャボンの泡のようにも見える。
台湾の山々がちらりと見えた。
頂上付近に白いものが見える。
雪だ。
南の国台湾にも高山では雪が降るのだ。
台湾の雪山山脈あたりだ。
台湾を過ぎ暫くすると、窓の外が夕陽に染まってきた。
雲は紅に染まる。


映画「涙そうそう」を見終わると、
窓の外は、暗闇のベールに覆われていた。
夜間飛行。
空は星しか見えない。
サン=テグジュぺリの「星の王子さま
「大切なものは、目に見えない。」
「おとなは、だれでもはじめ、子供だった。」
そんな言葉を思い出す。
私は不思議な気持ちで、暗闇に輝く星をみていた。
空に切れ間はない。
しかし下界には、海があり、陸があり国境がある。



サン=テグジュぺリの「夜間飛行」は、
暴風雨の中、プロペラ機の夜間飛行。


闇を切り裂く夜間飛行。
マッハの夜間飛行。
夜間飛行は心ごと日本へ向かう。