コンプレックスの闇


万俵大介(北大路欣也)のおぞましい記憶。
妻寧子(原田美枝子)と亡き父との忘れ形見が鉄平であること。
それが、大介の亡き父への、強烈なエディプスコンプレックスとなる。
大介の心の鏡で、亡き父と鉄平が二重写しとなり、
それが、鉄平への憎悪となる。
「おまえだけが私の息子だ。」
銀平(山本耕史)の肩を揺さぶる大介。


万俵鉄平(木村拓哉)は、父大介の心の深遠を見せ付けられ動揺する。
しかし、妻早苗(長谷川京子)の励ましの言葉に元気づけられた直後、
新高炉が爆発する。
「天は我に見方したか。」
と呟く大介。
「天は我を見放したか。」と言う、「八甲田山」の有名な科白を彷彿させた。
北大路欣也が出演していた「八甲田山」を意識しての科白か・・・・


父と息子ではなく、
男対男の戦いとなる大介と鉄平。
高炉爆発は、様々な悲劇を呼ぶ。
唯一の救いは、異父兄弟である兄鉄平を、
弟銀平が慕っていることだ。
鉄平と大介の戦いは、
祖父と父との代理戦争になる。
オスライオンは自分の遺伝子以外の子孫を抹殺する。
万俵大介は、人間から野獣の本能に変身したのか・・・・
そして、息子鉄平までも。
高炉の爆発は、二人の戦いの火蓋でもあったのだ。