男の戦い


万俵大介(北大路欣也)と万俵鉄平(木村拓哉)の、
男と男の戦いの火蓋が切られた。
万俵大介の強烈なコンプレックスが、
万俵家の崩壊への序曲となる。


妻を父に獲られた大介。
万俵大介は、息子鉄平と、異父兄弟でもあるのだ。
後継ぎの男系としては、万俵銀平だけでなく、
祖父の息子である鉄平は、万俵家の血筋を継いでいる。
このことは事実だ。
しかし、大介にとって自分の血を受け継いだ銀平(山本耕史)のみが、
唯一の正統な息子なのだ。
大介の行為は、オスライオンのようだ。
オスライオンが、自分の遺伝子を残すべく、他の種の子ライオンを殺める。
オスライオンは、自分の遺伝子しか許さない。


それにしても、大介も鉄平も、
互いの気持ちを理解しようとしないことでは、同じではないか。
もしも、鉄平が大介の境遇だったら・・・・
もしも、大介が鉄平の立場だったら・・・・
互いに相手の心を察する気持ちがあれば、
このような悲劇的な、泥沼の肉親の争いにはならなかっただろう。
惻隠の情は無ければ用意すべきだ。


私は、万俵鉄平の妻早苗(長谷川京子)に好感を持つ。
夫鉄平に、運命の雨が容赦なく叩きつけても、
ついてゆく心根が力強い。
お嬢様の弱々しさはそこにはない。


NHKの大河ドラマ風林火山」の通り、
戦国武将、武田信玄は、父晴信を追放した。
万俵家とは、逆の父子の展開だ。
共通しているのは、有能な息子に対する、父親の嫉妬と恐れが、
親子の対立の原因になっている。
父と息子の、コンプレックスの悲劇は繰り返される。