肩を貸す


先日、同業者の、お母様のお通夜でのこと。
葬儀は、セレモニーではなく、大きなお寺で執り行われ、
通夜ぶるまいの席は、畳の座敷であった。


通夜ぶるまいで、隣の席に、知り合いの女性社長が座った。
女性社長は、60前後で、社長業を20年続けている。
お父様が創業者で、後を継がれた方。


お寿司、天婦羅、筑前煮などが、並んでいた。
食欲がないのか、女性社長が、箸を付けないので、
筑前煮を取り皿に、取って上げると、
「食欲がないけど、筑前煮なら食べれる。ありがとう」
と、お礼の言葉をかけてくれた。
前に座っていた社長が、私のことを、
「一見冷たそうだけど、やさしいんだね」
とおっしゃった。
「いつもやさしいのよ」
と女性社長。
その言葉に、座が和んだ。


女性社長は、中座するとき、
私の肩に手をおいて立ち上がった。
彼女は、少々足を痛めていたので、
支えが欲しかったのだろう。
私は、少し嬉しい気持ちになった。
肩を貸す、
肩を借りる、
あうんの、信頼関係のような気がしたからだ。