松たか子 彼女が歌う理由


歌を唄うときの松たか子は、実に楽しそうだ。
特に、レコーデングの彼女は・・・・
緊張感と和やかさが漂うスタジオ。
松たか子は、歌う人魚になる。


松たか子が今年30歳になった。
もうそんな年かなと、思った。


女優、松たか子を意識したのは大河ドラマ「秀吉」
強烈な印象だった。
竹中直人演じる秀吉を、
「サル」
と呼び捨てにする、松たか子の表情が絶妙。
気品がありながらも意地悪っぽく、
戦国の姫、茶々(淀君)にピッタリだった。


彼女が演じる文学作品の女性は、激しい気性の役が多い。
「櫂」の冨田喜和、「明るいほうへ明るいほうへ」の金子みすづなど。
譬えれば原色の色、しかし、シンガーソングライター松たか子の世界は、
どこかクレパスや水彩画のような、中間色の心地良さがある。
明日、春が来たら」「サクラ フワリ」
何れも、パステルカラーのような曲。


彼女が、歌手になったきっかけは、
木村拓哉と共演したドラマ「ロングバケーション
の打ち上げのカラオケ。
何気なく同席していた音楽ディレクターに、
彼女の歌が、認められたからだそうだ。


この番組で、松たか子梨園の娘だと感じたのは、彼女の言葉使いの端々。
例えば、こんな言葉使いが、梨園の娘藤間隆子らしいな、と感じた。


    『あんまり考えないたちなんです』


この『たち』という言葉、あまり若いお嬢さんは使わない。
『たち』を「ひと」などと使う若い女性もいる。
「わたしって、あまり考えない、ひとなの」
とか・・・・・
『たち』を「性分(しょうぶん)」という年配の方もいる。


先月、同じ梨園出身の、市川海老蔵のドキュメンタリーを見た。
海老蔵は、伝統芸能歌舞伎と格闘する戦士のようだった。
松たか子は、同じ梨園でも、女性である事で、比較的自由に振舞えるし、
父親の松本幸四郎も、どちらかと言えば、歌舞伎役者に留まらず、
演劇、テレビドラマ、映画、そして歌にと活躍している。
そうした自由なる家風が、彼女のマルチな才能となり、花開いているのだろう。


彼女のフォトエッセイに「松のひとりごと」がある。
今日の番組構成は、まさに歌手松たか子を語る、
松のひとりごと、そんなドキュメンタリーでした。
松たか子を見ていたら、なんとなく楽しい気分になった。
松たか子にとって、歌とは自らの想いを伝えることなのかもしれない。