ホールインワンの別れ


ゴルフを始めた美知子。
クラブを思い切り振り、
白球が、紺碧の空に吸い込まれてゆく。
40の手習いで始めたゴルフだったが、
美知子にとって、日々上達してゆく自分を感じるのは、
悪くはなかった。
子育ても終わり、自分の時間を充実させたい。
そんなことで、3年前から会社勤めを始めていた。
夫は、九州の福岡で単身赴任。
美知子の給料は、美知子が自由に使える。
何よりも、今まで、子供や夫中心に人生を送ってきた美知子にとって、
ようやく自由に時間を使えるようになったのだ。
40を過ぎ、女であることの確かさを求め気持ちも、どこかにあった。


美知子には栞という中学時代からの女友達がいる。
バレーボール部で、彼女とは共に汗を流した。
そして、部活の帰りには、
アイスやあんみつなど甘い物をよく食べた。


栞は、バツイチでフリーの身だ。
この栞から勧められて、美知子はゴルフを始めた。


「レッスンプロは、イケメンで教え上手な人にしなさい」


イタズラっぽい眼をして、美知子にアドバイスする栞。
確かに栞は、教えられ上手だった。
レッスンプロの動きに、体を自然にあづけながらも、
そのテクニックは、貪欲に身につけていた。
レッスンプロ目当ての一部の女性とは違い、
ゴルフそのものにも、情熱を注いでいた。


学生時代から、女一人で、男性たちに囲まれた栞は、
活き活きと咲いている、大輪のバラのような存在だった。
そんな栞は美知子にとって、少し眩しく、羨ましい存在だった。


美知子は自分が不器用な女だと思う事がある。
特に男性の前では・・・・
しかし、会社勤めを始め、スポーツを始めた事で、
自分自身を取り戻し、自信も付いてきた。
ゴルフコンペなどで、男性から話しかけられても、
物怖じすることなく、笑顔で会話をする事が出来るようになった。


「女ざかり」


そんな言葉が、自分の頭に浮かんで、
改めて女であることを自覚する美知子だった。

(続く)