ヒットメーカー阿久悠物語


かつて、「スター誕生」というオーデション番組があった。
山口百恵桜田淳子森昌子中森明菜小泉今日子
綺羅星のごとくスターを輩出させた番組。
様々な芸能プロダクション、レコード会社が、
明日のスターを発掘しようと参加していた。
その審査員の中に、阿久悠がいた。


当時の芸能界の最大勢力である、
渡辺プロダクションが「スター誕生」には、
参加していなかったことだ。
当時、芸能プロの構図は、渡辺プロ対他の芸能プロであり、
所謂、ナベプロは圧倒的な強さを誇っていた。
60〜70年代の新春かくし芸大会の出演者を見れば、一目瞭然だ。
ナベプロタレント、オンパレードであった。
そんなナベプロ全盛時代に、スター誕生は革命を起こす。
スター誕生の真骨頂は、何よりも優秀な人材の発掘と、その育成にある。


スターからアイドルへの時代。
映画女優では、吉永小百合がさきがけかもしれない。
テレビドラマでは、岡崎友紀吉沢京子
歌謡界の地殻変動
仕掛け人は、阿久悠


若者たちは、手垢の付いていない、
捥ぎたての果実のようなアイドルを渇望していた。
阿久悠田辺誠一)は、素材の新鮮さを求める。
デビューからスターの輝きを放つ桜田淳子
燻し銀のような山口百恵


山口百恵のアンチテーゼとしてのピンク・レディーの存在。
途轍もない重いものを背負い、その圧倒的な存在感の百恵。
計算された、どこまでも人工的なアイドルのピンク・レディー
世間を裏切るような、非日常の世界を、
阿久悠は、ピンク・レディーに託す。
テーゼとアンチテーゼのエネルギーは、
アイドル全盛時代のジンテーゼを現出させる。


たかがアイドル、されどアイドル。
夢喰う男達。