赤ひげ

黒澤明監督の「赤ひげ」を観る。
3時間の長編の映画だったが、全篇飽きることがなかった。



白黒映画の独特の臨場感があり、
特に、二木てるみ演じるおとよの、獣のような、
人間離れした眼光は迫力があった。
心を閉ざした少女のおとよが、
青年医師保本(加山雄三)とのふれあいの中で、
しだいに心を開く場面に感動した。
必死に保本を看病する中で、おとよは、
人間としての気持に目覚めてゆく。
保本の熱を冷ますために、窓に積もった雪を素手で掴むシーンが印象に残った。


赤ひげ(三船敏郎)に最初は反発していた保本が、
市井の人々を診察し、様々な事件に巻き込まれながら、
仁術としての医を目指す姿を加山雄三が、
とても自然に演じていた。
三船敏郎の赤ひげもなかなか渋い。
ただ、忘れてはならないのは、小林桂樹の赤ひげ。
この「赤ひげ」は、NHKで、1972年に放映された時代劇。
小林桂樹演じる赤ひげには、医師の風格のようなものがあった。


赤ひげには、ある種独特の倫理観があり、
どこかそれは、黒澤明の倫理観と重なるのかもしれない。
それは、青臭く、泥臭いヒューマニズムの匂いがする。
「赤ひげ」は、黒澤ヒューマニズムが溢れた映画だと思う。