明菜の悔し涙


中森明菜の悔し涙は可愛かった。
それは、「ザ・ベストテン」で「セカンド・ラブ」が、
5週連続1位を獲得したときのこと。


「セカンド・ラブ」の作曲をした、
来生たかおから、お祝いの生電話があった。
「歌手としてどういう方だと思いますか」
との黒柳徹子の問いかけに、
来生たかおは、
「可能性が高く、良いシンガーになると思います」
と、デビュー1年の明菜を評していた。


当日、中森明菜は風邪のために声が出なかった。
苦しそうに、かすれた声を振り絞る明菜・・・
歌い終り明菜は、
「はずかしい」
と独り言のように呟いた。


ベストテンのエンディングで、
大粒の涙を流す明菜が映し出された。
まさにプロ歌手としての、悔し涙だった。
口パクをせず最後まで歌った18歳の少女に、
歌姫として大成した中森明菜の片鱗を見る思いがした。