黄薔薇の女性


一枚の祖母の写真。
日傘を差し、当時流行だった、
二百三高地髷(にひゃくさんこうちまげ)に結い上げた髪。
鶴のような細い首をやや傾け、
唇を軽く噛みしめる仕草の17歳の頃の写真がある。
大正2〜3年頃の写真だろう。
当時のお見合い写真だったのか?
それは分からないけど、
若い頃の祖母は切れ長の目が綺麗な日本美人だった。


さて橋口五葉に『黄薔薇』という作品がある。
そこに描かれたうら若き婦人が、
どこか祖母の乙女時代と重なり、
千葉市美術館の「橋口五葉展」に足を運んだ次第だ。


この『黄薔薇』もさることながら、
『此美人も』素晴しい。
三越呉服店の懸賞広告で一等を受賞したポスター。
モデルは二百三高地を結った凛とした美女だ。
着物や帯びに、椅子や壁に図案化された花々が咲き乱れている。
当時グラフィックデザイナーという言葉があったかどうかは定かではないが、
明治から大正にかけての日本の稀代のグラフィックデザイナーであると思う。


俳誌「ホトトギス」の挿絵には飄逸な作品もあり、
庶民の風俗画としても面白い。
夏目漱石の「我輩は猫である」の装丁本はコミカルでいて、
気品のある猫が描かれている。


今日は芥川龍之介の命日だけど、
「橋口五葉展」で文藝の香りを楽しむことができた。