吉祥寺美術館池田満寿夫展


武蔵野市立吉祥寺美術館で、
池田満寿夫展」ー組み合わされたイメージのなかへーを鑑賞。
入館料100円
これは実に良心的な入館料だと思う。


10年ほど前に業界団体の名誉会長から、
池田満寿夫の作品を預かっているんだけど見に来ないか」
と誘われたことがあって、会社まで見に行ったことがあった。


作品にはヴァイオリニストの佐藤陽子さんのサインもあった。
ただ、どんな作品だっのか覚えてないので、
印象は薄かったようだ。
確か120〜30万円で売りに出されていた。


池田満寿夫はマルチの才能を持った芸術家だ。
銅版画を中心とした芸術家だが、小説や映画監督としても活躍した。
芥川賞を受賞した小説「エーゲ海に捧ぐ」はベストセラーになり、
自らも監督としてメガホンを取っている。
エーゲ海に捧ぐ」のベルシャンブルー海の映像は、
どこまでも美しかった。
そういえば彼の作品の「ブルー」は実に鮮やかだ。
見る者の脳裡のキャンバスにブルーが広がるのだ。


また彼は独学で画家の道を歩んでいる。
芸大卒業生ではない。
アカデミズムから離れたところにいた芸術家だ。


「私をヒモのように言う人がいますが、
 私は女性を養ってきました」
と、生活人としても自立してきたことを強調しているところが、
文芸評論家の小林秀雄に似ているなと思った。
「女に食わしてもらってはいない」
ことにこだわっているところが、
昭和一ケタ生まれの男のプライドを垣間見たような気がした。


異素材を組み合わせることで、新たな芸術の地平を切り開く。
「組み合わせて構成する」ことが彼の真骨頂であり、
「芸術はよく無から創造するというけれど、
 そうではなく様々な素材を組み合わせて創作する」
そんなことを彼が語っていたのが印象的だった。


作品では晩年の1995年の制作の「バイオリン」に興味を持った。
寸法は535×390mm。
素材はセラミック、プラッチック、綿棒で出来ている。


彼の作品「バイオリン」から、
イメージの変容がモチーフの本質に切り込んでいくような、
そんな感覚に襲われた。
抽象化による具体性の炙り出しのような・・・・


それにしても金田一耕助のようなモジャモジャの髪と、
子供のような無邪気な笑い顔の池田満寿夫氏は、
ある日突然、心不全で鬼籍に入られた。
愛くるしい男の笑顔・・・
今もどこかで池田満寿夫氏が活躍されているような気がしてならない。