月の女


「私が死んだらお墓にタバコをお供えしてね・・・」
そう言って沙希は悪戯っぽく微笑んだ。
九鬼は少し真顔で、
「馬鹿なこと言うもんじゃない」
とたしなめた。
生意気で儚げで愛しい女・・・・


九鬼はヨコスカの暗い海を思い出していた。
あの夜、海に吸い込まれそうになった記憶。


そんな九鬼の思いを知る由もなく、
いつものように沙希は無邪気な月の精になり、
九鬼に光を照らしていた。