2011-12-13 月の女 ショートストーリー 「私が死んだらお墓にタバコをお供えしてね・・・」 そう言って沙希は悪戯っぽく微笑んだ。 九鬼は少し真顔で、 「馬鹿なこと言うもんじゃない」 とたしなめた。 生意気で儚げで愛しい女・・・・ 九鬼はヨコスカの暗い海を思い出していた。 あの夜、海に吸い込まれそうになった記憶。 そんな九鬼の思いを知る由もなく、 いつものように沙希は無邪気な月の精になり、 九鬼に光を照らしていた。