平安の夢


何日前のことだろう・・・
記憶はあるのだが、時間の観念がまるごと喪失しまった夢がある。
それはとても幸せな夢だった。
桜の花の下で談笑しているかのような夢だった。
うたた寝から目覚めたとき、
たとえようもない満ち足りた気持になっていた。


    枕だに 知らねば言わじ 見しままに
          君語るなよ 春の夜の夢

                 和泉式部


和泉式部の艶やかな和歌。
私とあなたが枕を並べたことは、
枕さえ知らなければ言わないのですから、
そうぞ見たままを語ることはおやめ下さい。
あの春の夜の夢のような睦事を・・・


夢か現(うつつ)か
現か夢か
現に戻す罪深さを
知ってか知らずか平安という時代は、
夢と現が現実の糸で織られている。
わたしも平安の夢を見ていたのだろうか・・・