隠し剣鬼の爪


藤沢周平原作の映画「隠し剣鬼の爪」を観る。
山田洋次監督作品。


平侍の片桐(永瀬正敏)と女中のきえ(松たか子)との淡い恋を軸に、
物語が展開する。


わたしが印象深かったのは、
雪の降りしきる中、
片桐が街中の小間物屋できえを見かけるシーン。
片桐家で女中をしていたきえは三年前に裕福な油問屋に嫁いでいた。
そんなきえではあったが、
見間違えるほど痩せ背中も薄くなっていた。
女中として奉公していた片桐の母の一周忌に出向かなかったことに、
きえは詫びをいれる。
そんなきえに片桐は半衿(はんえり)を買い与えるのだった。
きえはその優しさに泣き出してしまう。
「幸せか・・・」
と問う片桐に、
「大事にします」
半衿の礼で応えるきえが切なかった。
片桐ときえの互いの思いが半衿を通して溢れ出ていた。
しかし、そんな思いを胸に、
雪の中を二人は別れ行く。


半衿(はんえり) 和服用の襦袢に縫い付ける替え衿のこと。
名前はその長さが実際の衿の半分程度からによる。