神様のカルテ


映画「神様のカルテ」を観た。
信州松本の医療機関に勤める内科医、栗原一止(櫻井翔)
病院は24時間365日診療の救急病院。
一止も毎日徹夜で治療に当たっている。
「案じてました」
そんな古風な言葉で遅く帰宅した妻を心配する彼は、
夏目漱石を敬愛し、漱石の作品のなかでも取り分け「草枕」を愛読している。


草枕」は『智に働けば角が立つ、情に棹させば流される、意地を通せば窮屈だ。
 とかく人の世は住みにくい』
で有名な小説。


医師、栗原一止(くりはらいちと)の生き方が、
この漱石の「草枕」の一文のような気がした。
神様のカルテ」を見ながら、
いつしか「草枕」の一文と一止の心模様がアラベスクとなり、
私の心に広がるのだった。


一見冷静沈着で、茫洋とした風貌の一止だが、
患者と向き合いながら、心はきりきり痛み、
号泣している。
そんな一止に寄り添う妻の榛名(宮崎あおい)
榛名はカメラマンで全国の風景を撮っている。


一止のカルテは彼そのものだった。
「先生のカルテは神様のカルテでした」
びっしりと手書きで書かれたカルテ。
そんな一止のカルテを末期癌のおばあさん(加賀まりこ)は、
神様のカルテ」と呼んだ。