傍らに渡辺淳一が ・・・


鎌倉プリンスホテルに泊まったのは、
失楽園」が上映されているころだったな・・・
小説家の渡辺淳一氏が4月30日に鬼籍に入られた。
享年80歳。


渡辺淳一の小説では「阿寒に果つ」と「まひる野」が印象深い。
「阿寒に果つ」は天才少女画家、時任淳子の自殺の謎を小説にしている。
この小説は映画化され、五十嵐淳子がヒロインの時任淳子を演じていた。
五十嵐淳子のヌードにドキドキしたのを覚えている。
そして10代のわたしに鮮烈だったのは、五十嵐淳子演じるレズシーンだった。


まひる野」を読んだときは、
20代の頃で、
デザイナーの年上の女性が気になっていた。
口数の少ない、凛とした日本美人だった。
笑うとどこか寂しげなところが魅力的だった。
御主人は確かお医者さんだった。


「あなたとわたしと手をつないでる夢を見ましたの、
 夢の中でわたしもあなたも小学生でしたわ」


ある日二人きりのとき、そんな夢の話をされたのを思い出す。
「年上ゆえに若さへの願望が小学生の姿になったのか・・・」
そんな推測もできるが、
何故、唐突にそんな話をしたのか、いまも謎だ。
彼女の夢の話にどのようにわたしが応えたのか今となっては定かでない・・・
当時渡辺淳一の「まひる野」を読みながら、
京都の扇子の老舗の若女将、多紀とその女性が二重写しになっていた。


渡辺淳一の小説は女性の思い出と重なる。
恋愛の傍らに渡辺淳一がいた。
最近のわたしは、
渡辺淳一の恋愛小説からは遠ざかっている。