海を見ていた午後


   あなたを思い出す この店に来るたび
   坂を上って 今日もひとり来てしまった
   山手のドルフィンは 静かなレストラン
   晴れた午後には 遠く三浦岬も見える


荒井由実作詞「海を見ていた午後」


思い出は向こうから、突然やってくる。
「海を見ていた午後」を聴きながら、
わたしは横須賀の坂の上にあったレストランを思い出していた。
東京湾を見下ろせるレストランで、
晴れた日は緩やかな起伏の房総半島が見えた。
窓枠を額縁にしたら、そのまま一服の絵画になるような風景だった。
レストランのテーブルクロスが、
赤と白の格子柄だったのを何故か覚えている。
記憶の一輪の花が咲いた。