老犬ぬい


「ぬいはどうしているんだろう。」
今朝、そんな思いが頭を過った。


「ぬい」とは犬の名前。
そろばん塾の隣の家の犬で、
玄関の脇の犬小屋に飼われていた。


かなり年老いた犬なのだけど、
たまに通るとこの老犬は座ったままで、こちらを見ていた。
ぬいは媚びることも、それでいて吠えることもない、
ちょっと気になる犬だった。
おとなしく顎鬚が伸び、ややたれ目で、
こげ茶色の毛並みの犬だった。


何度か見かけるうちに、勝手に「ぬい」と私は名づけていた。
本当の名前は飼い主に聞かなければ解らない。
なぜ「ぬい」にしたかというと、
「いぬ」を逆さまに読むと「ぬい」となるからだ。


ぬいはこれといって可愛いいわけでもなく、
ごく平凡な犬だった。
ただどこか哀愁のある犬だった。
もう引っ越して2年以上経つけれど、
「ぬい」は元気かな・・・