母やさし


   野を焼いて
    帰れば燈下
      母やさし

        高浜虚子


早春のまだ枯草が残っている頃、
その枯草に火を付けて燃やすのが野焼き。
焼けた草は灰になり下萌を呼び覚ます。
野焼きはどこか荒らしい。
それでいて野焼きの炎を見ていると恍惚とした気持ちにもなる。
野焼きを終えて、帰ってくると燈下の母親の姿があった。
母親は燈下で縫い物でもしているのだろうか。
その母を
「母やさし」
と虚子は照れもせずに詠む。
少年が母を慈しむような高浜虚子の句。