俳句

父はひとり・・・

嫁がせて 父はひとり りんご剥く 小津安二郎監督の「晩春」のラストシーンを俳句にしました。 大学教授の父親の周吉(笠智衆)は、娘の紀子(原節子)を嫁がせた夜、 娘のいない自宅でひとり、りんごの皮を剥く。 周吉と紀子は父と娘のふたり暮らしだった。 剥か…

新芽かな

六度目の 新芽吹いたる 震災日 ※ 季語は新芽で春

啓蟄(けいちつ)

啓蟄の 土に眠りし わが子かな(けいちつの つちにねむりし わがこかな) ※ 季語は啓蟄(けいちつ)で春 啓蟄は二十四節気の第三の節気、 大地が暖まり冬籠りの虫が出てくる。

二月尽(にがつじん)

おむすびの こめつややかに 二月尽 季語は二月尽(にがつじん)で初春 二月尽は二月が終わること、 寒さが緩み、日が伸びる季節。

春の夜明け

日ごとに夜明けが早まり、 日ごとに春へと進んでいる。 讃美歌の 春のにほひの 夜明けかな

土筆(つくし)

小坊主の 土筆の頭 撫でにけり (こぼうずの つくしのあたま なでにけり)季語は土筆(つくし)で春

アリア

夜明け前 寒星ひとつ アリアかな 季語は寒星で冬

第九かな

月昇る ベートーベンの 第九かな 今宵の月が昇るさまを見ていたら ベートーベンの第九が耳の奥で鳴った。季語は月で秋 満月に 抱かれ眠る 兎かな 満月のうさぎ どこか円いお月さまに抱かれて眠っているようだ。季語は満月で秋

建国日

満月の 神代の光 建国日 中天の 月かがよへり 建国日 戦禍なき 建国の日を 迎えけり 今日は建国記念日。 皓皓(こうこう)と満月が照らす。 神代の時代の光そのままに。 今年も建国記念日が戦禍なき平和の日で迎えられた。季語は建国日で早春

母やさし

野を焼いて 帰れば燈下 母やさし 高浜虚子作 早春のまだ枯草が残っている頃、 その枯草に火を付けて燃やすのが野焼き。 焼けた草は灰になり下萌を呼び覚ます。 野焼きはどこか荒らしい。 それでいて野焼きの炎を見ていると恍惚とした気持ちにもなる。 野焼き…

はしご酒

赤提灯 出でて雪の はしご酒 (あかちょうちん いでてゆきの はしござけ )季語は雪で冬

赤ひげ

赤ひげの 髭の滴る みぞれかな(あかひげの ひげのしたたる みぞれかな) 季語はみぞれで冬

節分

節分や 福の名前の 友と飲む 季語は節分(せつぶん)で早春 節分に福の名前の友と飲んだ。

実南天

讃美歌の 遥かなるかな 実南天 季語実南天(みなんてん)で冬

万両(まんりょう)

万両の 一輪挿しの 楽屋かな季語は万両(まんりょう)で冬 万両の実は冬に赤い実がなり、 正月の縁起物にもなっている。

冬の朝陽

バロックの 冬の朝陽の 昇りけり バロック音楽のような荘厳な冬の朝陽が昇る。 ※季語は冬で冬

別れの切符

大寒の 別れの切符 握りしめ (だいかんの わかれのきっぷ にぎりしめ)季語は大寒(だいかん)で冬

虎落笛(もがりぶえ)

尖りゆく 摩天楼より 虎落笛 (とがりゆく まてんろうより もがりぶえ) 天に突き刺す摩天楼に冬の風が激しくぶつかり、 虎落笛となる 季語は虎落笛(もがりぶえ)で冬 ※虎落笛は冬の激しい風が竹竿や建物などに吹き付けて、 発する笛のような声

雪の夜

雪の夜の くちづけしたる 小窓かな (ゆきのよの くちづけしたる こまどかな) 季語は雪で冬

去年今年(こぞことし)

日は沈み 日は昇りゆく 去年今年 (ひはしずみ ひはのぼりゆく こぞことし) 大晦日に日は沈み、新年に日が昇り、年が新まる。 去年今年の思いを俳句にした。 ※ 季語は「去年今年(こぞことし)」で新年 新年にあたり年去り年来ることを思うこと。行く年来る年。…

イブの夜

イブの夜の 月に捧ぐは 清き酒 オスカルに 捧げるイブの 紅き薔薇

林檎を齧る女

けんかの後 林檎を齧る 乙女かな 季語は林檎で秋

終着駅

女ひとり 終着駅の みぞれけり 季語はみぞれで冬

夜明け前

バロックの 流るる秋の 夜明け前 ※ 季語は秋

子猫

小春日の 毬と戯むる 子猫かな (こはるびの まりとたわむる こねこかな) * 季語は小春日で冬

秋の暮

みずからの 影とたわむれ 秋の暮 * 季語は「秋の暮」で秋

紅葉舞ふ

しずやしず 静御前の 紅葉舞ふ 静御前は白拍子にして義経の愛し人*季語は「紅葉」で秋

空き瓶の薔薇

空き瓶の 薔薇の香りの 下宿かな 季語は薔薇で初夏

向日葵

向日葵の 種蒔く恋の はじめかな 季語は向日葵(ひまわり)で夏

紅絹裏(もみうら)

紅絹裏の 仕立てる秋と なりにけり 季語は秋で秋 ※ 紅絹裏(もみうら)とは、紅絹(もみ)を着物の裏地に使うこと