黒髪を歯で噛み切りし落花かな


狂ふとは、時として美の極みを演出する。
取り分け恋に狂ふ女は、数々の舞踊で演じられている。
恋に狂った男は愚かだが、女はどこか崇高な光さえ放つ。
はらはらと櫻散るなか、黒髪を噛み切る。
そんな幻想がある舞踊を観たとき、閃光のように走った。
黒髪を御身の歯で噛み切るは、己の力で恋を断ち切ることか、
それとも、自らの迷ひを断ち切ることか。
賢しらな男の理屈などの入り込めぬ世界なのか。
迷宮のラビリンスは続くのみだ。


*落花
 櫻の散る様子を俳句では、落花という季語を使う。


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